研究概要 |
超臨界二酸化炭素晶析(SCF)法は,近年製剤学分野で機能性微粒子の製造手段として注目されている.我々はすでに,ベクターとしてキトサンを用い,SCF法により遺伝子溶液を微粒子化することで,遺伝子の発現が増大し,発現時間が持続することを報告した.そこで本研究ではSCF法により,キトサン-インターフェロンβ遺伝子製剤を調製し,マウス肺転移癌モデルにより,その治療効果について検討した. プラスミドDNAとしてマウスインターフェロンβをコードするpCMV-Muβを選択し,非ウイルス性ベクターとしてキトサンを用いた.エタノールを補助溶媒として,キトサン-DNA水溶液をSCF中に分散させることでDNA微粒子製剤を調製した.マウス肺転移モデルは,マウス結腸癌細胞CT26をCDF1マウスに尾静注することにより作成した.調製した製剤をマウス肺内に投与し,肺重量,肺転移性結節数,生存日数について検討した. SCF法により調製した製剤投与時は,キトサン-DNA溶液の肺内投与時と比較して,より少ない投与量において肺重量,肺転移性結節数が減少し,生存日数は延長した.キトサン-DNA溶液尾静注時と比較しても,同様の結果が得られた.したがって,超臨界二酸化炭素晶析法により調製した遺伝子微粒子製剤は,マウス肺転移モデルにおいて.高い治療効果を持つことが示唆された. また,レポーター遺伝子としてホタルルシフェラーゼをコードするpCMV-Lucの微粒子製剤をマウス肺転移モデルに投与し,肺組織内でのフシフエラーゼ発現を検討した.正常組織に比べ,癌組織でのルシフェラーゼ活性が高い傾向が認められ,遺伝子微粒子製剤の吸入により,効率よく遺伝子が肺癌組織に送達され,癌抑制効果を発揮するものと考えられた.
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