研究概要 |
超臨界二酸化炭素晶析(SCF)法は,近年製剤学分野で機能性微粒子の製造手段として注目されている.我々は平成16年度科学研究費補助金による研究で,SCF法により調製したキトサン-インターフェロンβ遺伝子製剤をマウス肺転移癌モデルにより投与し,遺伝子微粒子が高い転移癌抑制効果と生存日数延長効果を示すことを明らかにした。本年度は,遺伝子製剤の安定性を検討し,また,さらに有効性の高い遺伝子微粒子を得るために,異なる処方の製剤の有用性を検討した. プラスミドDNAとしてルシフェラーゼをコードするpCMV-Lucを選択し,非ウイルス性ベクターとしてキトサンを用いた.エタノールを補助溶媒として,キトサン-DNA水溶液をSCF中に分散させることでDNA微粒子製剤を調製した. 遺伝子製剤の安定性は,電気泳動法及び遺伝子ドライパウダーをマウス肺内投与後のフシフェラーゼ活性により評価した.遺伝子溶液を25もしくは40℃で保存すると2週間後には電気泳動法で遺伝子が確認できなくなったが,微粒子製剤では4週間後でも遺伝子が残っていた。さらに,微粒子製剤では4週間保存後にマウス肺内に投与しても,高いルシフェラーゼ活性が得られた. 微粒子の賦形剤をこれまでのマンニトールから乳糖に変えて微粒子化した,マンニトールの場合は長さ十数μmの針状結晶であったが,乳糖では直径10μm前後のウニ状粒子が得られた.マウス肺転移モデルは,マウス結腸癌細胞CT26をCDF1マウスに尾静注することにより作成した.調製した製剤をマウス肺内に投与したところ,乳糖を賦形剤とする製剤投与時は,マンニトール製剤投与時と比較して,腫瘍組織及び正常組織中でのルシフェラーゼ活性が増加した.
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