研究課題
生物学的系におけるポリアミンの重要性と核酸のような生物学的陰イオンの相互作用を媒介するそれらの機能は近年では、よく知られています。ポリアミンは抗癌活性や抗血栓活性のような多くの生物学的、薬理学的性質を示す。様々なポリアミンがDNAに結合し、DNAのコンフォメーションを安定化することはよく知られている。DNA-ポリアミン相互作用はポリアミンの性質に関係あるかもしれない。それ故にDNAとポリアミン間の相互作用様式を明らかにすることは非常に重要なことである。d(CG)_3の結晶構造は高塩濃度下で左巻きZ-型コンフォメーションを取り、様々なポリアミンはZ型DNAを安定化することもよく知られている。B-Z転移機構を明らかにする目的で私達はX線結晶構造解析法を用いてZ-DNA-ポリアミン複合体の構造について研究を行った。B-Z転移機構を明らかにすればポリアミンの生物学的性質を詳細に明らかにすることが可能になるかもしれない。この研究では私達は高塩濃度下で2価〜5価のポリアミンを用いて結晶化したd(CG)_3-ポリアミン複合体のX線結晶構造解析を行った。すべての結晶においてd(CG)_3はポリアミンがキレートしZ-型コンフォメーションであった。ポリアミンの原子価はd(CG)_3に結合しているポリアミンポリアミンおよび金属イオンの数に相関していた。6塩基対のDNA,d(CG)_3を高塩濃度下で様々なポリアミンと結晶化を行った。d(CG)_3-ポリアミン複合体の結晶構造はそれぞれ1Å分解能でX線結晶構造解析法によって決定した。すべての構造は二重らせんの左巻きZ型でそれぞれ同型であった。ポリアミンと金属イオンは水素結合か配位結合によって二重らせんのd(CG)_3分子に結合しポリアミンと金属イオンの価数の和である10価の正電荷はd(CG)_3のリン酸基の10価の負電荷によって中和されていた。たとえばd(CG)_3-サーミン複合体の構造においては2分子の4価のサーミンと1原子のマグネシウムイオンがd(CG)_3に結合していた。それぞれの結晶においてポリアミンのコンフォメーションと結合様式は異なっていた。更にポリアミンの原子価が増えると結合するポリアミンの数が増加する。更にポリアミンだけではなくモノアミンについても研究を行うと私達はd(CG)_3-モノアミン複合体の結晶化を行っていた。つい最近d(CG)_3-メチルアミンとd(CG)_3-エチルアミンの結晶化ができた。引き続きこれらの結晶のX線結晶構造解析を行っている。この研究は高塩濃度下のd(CG)_3-ポリアミン複合体の結晶構造はポリアミンが様々なコンフォメーションをとった左巻きZ型になることを示している。それは、ポリアミンの生物学的特性の分子メカニズムの解明に役立ちます。
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