研究概要 |
病原細菌が宿主に感染するさいに、ストレス蛋白と総称されるAAA^+プロテアーゼ(lon,clpXP,clpAP,hslVU)や分子シャペロン(dnaK,groEL)などが、宿主の防御機構に起因するストレスで誘導される。そこで、我々はストレス蛋白と病原性に注目して研究を進め、サルモネラ属細菌のプロテアーゼ(lon,clpXP)や分子シャペロン(dnaK)破壊株においてSPI1病原因子や鞭毛などTypeIII輸送装置を用いて細胞外に分泌される蛋白群の分泌量の変化を確認した。dnaKシャペロン破壊株においては、SPI1病原因子や鞭毛の分泌量が著しく減少することを発見した。そこで、dnaK破壊株の病原性について検討した。なお、dnaK破壊株は温度感受性の表現型を示し、37℃以上では著しい増殖阻害が観察される。そこで、上記温度で増殖可能なサプレッサー変異株を分離してマウスや培養細胞を用いた研究をおこない、dnaK破壊株では著しい病原性の低下が起こる事を確認した。またlonプロテアーゼ破壊株では、SPI1病原因子が過剰に分泌されることを発見した。そこで、その原因を調べる目的でβ-ガラクトシダーゼをレポーター遺伝子としながら、Lonのターゲット蛋白の同定を試みた。その結果、SPI1遺伝子群の転写活性化因子HiID, HiIC蛋白がターゲットである可能性が高いことを発見した。そこで抗HiID, HiICの抗体を作成し、細胞内存在量を定量した結果、lon破壊株において安定化が起こりHiID, HiICが蓄積していることを確認した。またSPI1病原甲子は、感染初期にマクロファージにアポトーシスを引き起こす特性があることが知られているが、lon破壊株では野生株と比較してSPI1病原因子の過剰分泌によるアポトーシスの過剰誘導が起こっていることを確認した。
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