非選択的カチオンチャネルとしてのバニロイド受容体の生体機能と分布の解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15590056
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 堀江 俊治 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 助教授 (50209285)
• キーワード: VR1 / TRPV1 / 胃 / 気管支 / 血管内皮細胞 / アラキドン酸 / カルシウム流入 / カプサイシン

研究概要

生体機能惹起に関与するカルシウム流入経路の候補として、バニロイド受容体(TRPV1)に着目し、本年度はTRPV1の生体機能と分布について研究を行った。その成果の概要を以下の4点にまとめた。
1.血管内皮細胞における附子アルカロイドによる一酸化窒素遊離作用:附子アルカロイドmesaconitineを用いて培養内皮細胞におけるカルシウム流入と機能について検討を行った。その結果、mesaconitineは内皮細胞の作用し、非選択的カチオンチャネルとナトリウム-カルシウム交換機構を活性化して、カルシウム流入を引き起こすことが明らかとなった。さらに、そのカルシウム流入により内皮細胞から一酸化窒素が遊離することを見いだした。
2.消化管におけるTRPV1の分布と機能:胃、大腸におけるTRPV1の神経線維は胃粘膜層、平滑筋層、神経叢に観察された。中でも粘膜下の血管周囲と筋間神経叢に豊富に存在していることがわかり、TRPV1神経が消化管粘膜血流と運動を調節しているというこれまでの生理学的知見を支持する結果が得られた。また、消化管運動におけるTRPV1の役割を検討し、カプサイシンとジンゲロールの協力作用を見いだした。
3.気道におけるTRPV1の分布:TRPV1神経線維は、気管支の平滑筋層と肺の動脈の周囲に豊富に観察された。また、TRPV1神経は外来性知覚神経であることが示唆された。
4.神経モデル細胞PC12におけるTRPV1の存在と機能:PC12においてTRPV1が弱いながらも発現していること、またその受容体を刺激するとカルシウム流入の後、アラキドン酸が遊離されることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Horie, S.: "Protective role of vanilloid receptor type 1 in HCl-induced gastric mucosal lesions in rats"Scand.J.Gastroenterol.. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] Minowa, S.: "Role of neuropeptides receptor systems on vanilloid VR1 receptor-mediated gastric acid secretion in rat brain"Eur.J.Pharmacol.. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] Ogura, J.: "Mesaconitine-induced relaxation in rat aorta : role of Na^+/Ca^<2+> exchangers in endothelial cells"Eur.J.Pharmacol.. 483(2-3). 139-146 (2003)
• [文献書誌] Horie, S.: "Contraction of isolated guinea-pig ileum by urotensin II via activation of ganglionic cholinergic neurons and acetylcholine release"Neuropharmacology. 45(7). 1019-1027 (2003)
• [文献書誌] Someya, A.: "Modification of capsaicin-sensitive neurons in isolated guinea-pig ileum by [6]-gingerol and lafutidine"J.Pharmacol.Sci.. 92(4). 359-366 (2003)
• [文献書誌] Minowa, S.: "Involvement of glutamate and γ-amino-butyric acid receptor systems on gastric acid secretion induced by activation of κ-opioid receotors in the central nervous system in rats"Br.J.Pharmacol.. 138(6). 1049-1058 (2003)