テロメラーゼ活性は、触媒遺伝子であるhTERTの発現によって制御されている。hTERT promoter 1.8kbpの下流に緑色蛍光タンパク質GFPあるいはルシフェラーゼ遺伝子を連ねてプロモーター活性をモニターするレポーター遺伝子配列を構築し、ベクターとしてレトロイウルスあるいはレンチウイルを用いて遺伝子導入系の確立を行った。その結果、種々のガン細胞や初代培養細胞などの細胞に高効率に遺伝子導入できた。hTERTを発現している大腸ガン細胞株RKOからは、RKO-TRPGFP細胞をhTERT転写活性モニター細胞として樹立した。正常細胞では有限分裂寿命により持続的なhTERT転写活性モニターが不可能になることから、内因性のhTERT promoter活性とは独立した強制発現系による恒常的なhTERT発現で不死化したものを用いた。正常細胞MRC-5およびNHFの2種類の線維芽細胞から、持続的にhTERT転写活性をルシフェラーゼ活性でモニターできるMRCT-TRPluc細胞、NHFT-TRPLuc細胞細胞を構築した。目的のレポーター遺伝子の導入は、使用したウイルスベクター特異的なプライマーを用いてジェノミックPCRにより確認した。ガン細胞株由来のモニター細胞RKO-TRPGFP細胞では緑色蛍光が、RKO-TRPLuc細胞では強いルシフェラーゼ活性が検出された。テロメラーゼ活性が検出できない正常細胞由来のMRCT-TRPLucおよびNHFT-TRPLuc細胞では、ルシフェラーゼ活性は全く検出されなかった。以上の結果から、ガン細胞および正常細胞でhTERT promoterの転写活性を持続的にモニターできる細胞を樹立することに成功した(特許申請中)。また、これらの細胞を用いてhTERT promoterの転写活性を変化させる天然物化合物をスクリーニングし、最終的に強い阻害活性を持つ2種類の天然化合物を得ることができたが、その阻害機構についてはさらなる検討が必要である。しかし、このようなhTERTの転写活性を下げるタイプの化合物は今まで無く、今後様々ながんの抗癌剤の候補として寄与するものと考えている。
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