研究概要 |
平成15年度においては、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対するパルミトイルカルニチンの作用について検討し以下の結果を得た。なおこの内容はJournal of Pharmacological Sciences 92,252-258(2003)において発表済である。 1.心虚血時に細胞から遊離されるパルミトイルカルニチンがHUVECに発現したEdg1受容体に作用し、細胞内Ca濃度の上昇を引き起こすこと 2.パルミトイルカルニチンをHUVECに作用させた後では、Edg受容体の内因性アゴニストであるスフィンゴシン1燐酸(S1P)がHUVECに作用しなくなること 3.パルミトイルカルニチンがEdg受容体の部分活性薬になること、などを明らかにした。S1Pは血管内皮細胞において強力な分化・増殖因子として作用することが知られている。本研究は、パルミトイルカルニチンが血管内皮細胞の分化・再生制御因子のひとつに成りうることを、初めて明確に示した極めて重要な報告である。 また関連研究として、骨格筋の細胞死を引き起こし、ヒトの筋ジストロフィー症の原因遺伝子のひとつと最近報告されたバニロイド型Ca透過性のカチオンチャネルが、血管平滑筋における血管内圧感知センサーとして働く可能性を初めて明らかにした(Cir.Res.93,829-838,2003)。 さらに関連研究として、、大腿動脈平滑筋細胞におけるKチャネル開口薬(KRN4884)の標的が、Kir6.1、SUR2Bであり、KRN4884が極めて効果的にATP感受性Kチャネルを開口させることを明らかにした(J.Pharmacol.Sci.93,289-298,2003)。
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