癌細胞の細胞死や悪性転化に関与するタンパク分子の網羅的高感度解析法を検討した。この目的の為に、我々が開発したチロシンキナーゼを特異的に阻害するアポトーシス誘導剤であるβ-ヒドロキシイソバレリルシコニンで肺癌DMS114細胞を処理し、癌細胞を可溶化後、二次元ゲル電気泳動法で分析した。ゲルを銀染色後、発現量や化学修飾レベルの変動するタンパク質のスポットを切り取り、トリプシンでin gel digestionを行ない、質量分析装置(Micromass製Q-Tof)によりタンパク質を同定したるリン酸化反応が阻害されたタンパク質のうちの一つがdUTPase (deoxyuridine triphosphate nucleotidohydroxylase)と同定された。実際に、dUTPaseに対する抗体を用いてウエスタンブロット法で調べた結果、リン酸化されたdUTPaseが減少していることがわかった。また、dUTPaseのmRNAに対するRNAiをDMS114細胞に導入してdUTPaseの発現を減少させ、β-HIVSで処理したところアポトーシスの誘導が増強された。従って、この方法で癌細胞のアポトーシス誘導に関与するタンパク質を網羅的高感度に解析できると考えられる。
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