研究概要 |
我々はすでにN^3-フェナシルウリジンがマウス脳室内投与で強い睡眠を惹起、またウリジンと糖部分の2'位水酸基配位のみが異なるアラビノフラノシルウラシル(AraU)のN^3-ベンジル、フェナシル基に各種ハロゲン置換した誘導体が催眠と同時に鎮痛作用を有することを報告している。そこで、常法に従いウリジン、AraUのハロゲン置換ベンジル及びフェナシルのN^3位置換体を合成し構造活性相関について検討し以下の知見を得た。試験化合物をddY系雄性マウスに2.0μmol/mouseの用量で脳内投与し、単独催眠作用及びペントバルビタール(+40mg/kg,i.p.)併用効果を測定した結果、ウリジンのo-,p-フルオロベンジル,o-,m-クロロベンジル、m-ブロモベンジル,p-クロロフェナシル置換体はN^3-フェナシルウリジンに比べると催眠作用は弱いものの12〜87分の睡眠作用を示した。PB併用効果ではコントロールと比較してp-フルオロフェナシル、o-クロロベンジル及びp-ブロモフェナシル置換ウリジンで各々351,328及び358%の有意な増強作用を有していた。鎮痛作用は、試験化合物を500nmol/mouse,i.c.v.投与しHot plate法により測定した結果、ウリジン誘導体ではp-ブロモフェナシル、AraU誘導体ではo-,m-フルオロベンジル、o-クロロベンジル、p-クロロフェナシル、p-ブロモフェナシル体に作用が認められた。また、N^3-(2',5'-ジメトキシフェナシル)置換体の鎮痛作用はナロキソンによって拮抗されたことから、ウリジンを始めとする関連化合物の鎮痛作用機序に一部オピオイド受容体の関与が考えられた。結合実験はSD系雄性ラット脳を10μmの厚さでスライスし脳切片を作製、プレインキュベーションにて内因性物質除去後、試験化合物100μMを添加し、δ-オピオイド受容体の特異的リガンド[^3H]DPDPEの結合阻害能を反応時間10、20及び30分で測定した.N^3-(2'5'-ジメトキシフェナシル)AraUによる[^3H]DPDPEの特異的結合量は、各反応時間において減少した。さらにシナプス膜では高濃度であるが[^3H]DPDPE結合量を減少させたことから、ウリジン関連化合物の鎮痛作用機序として一部オピオイド受容体の関与が示唆される。
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