研究概要 |
糖鎖マイクロアレイの改良と糖鎖ライブラリーを用いた生理活性糖鎖とタンパク質の検索に向けての研究を行っている。研究の初期過程でコンドロイチン硫酸を認識する抗体(CS-56とΔ-CS)の抗原決定基糖鎖の構造特異性を明らかにし、中枢神経系におけるSSEA-1抗原糖鎖を有するムチン型糖鎖、E-およびL-セレクチンの結合する糖鎖の相互作用する糖鎖の特異性と相対的な結合強度の違いを再確認することができた。そこで、今回はGAGの中でもヘパラン硫酸に比較して構造の多様性が少ないデルマタン硫酸(DS)に焦点を絞り、DSオリゴ糖を網羅した糖鎖マイクロアレイの作成を試みた。そこで、DSと結合するがコンドロイチン硫酸との比較に関して議論されているIFN-γとRANTESについてそれらが認識する固有の糖鎖構造の有無(特異性)を調べた。また、ヘパリンに比較すると弱いながらもDS鎖に選択的に結合すると報告されているHGF/SF、創傷治癒過程でその働きを促進させるとの報告がなされているKGF(別名FGF-7)についてもDS鎖上に結合する固有の糖鎖構造が存在するのかどうかを明らかにしようと試みた。その結果、IFN-γとRANTESの結合はCSA、DS、CSC由来の糖鎖で同程度であり、特にDSに親和性が高いとする結果は得られなかったが、IFN-γでは4mer以上、RANTESでは10mer以上の糖鎖に結合するものであり、鎖長に依存した結合を示すことを明らかにした。この結果はIFN-γとRANTESの分子構造から示される塩基性アミノ酸ドメインの大きさに依存して硫酸化糖鎖が結合する静電的な相互作用によるものと考えられた。また、ADHP化したNGLを用いてHGF/SFとFGF-7の結合するDS鎖の固有な糖鎖構造の有無を検索した。しかしながら、HGF/SF、FGF-7ともに若干DS鎖に強い結合シグナルを与えている結果が得られたが、CSA, CSC由来の糖鎖にも糖鎖の大きさに関わり無く結合シグナルを与えるものであった。そして、今後の問題として、糖鎖断片を得るための方法、ADHP化の効率、非特異的結合の排除などを再検討することが分かった。
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