研究概要 |
1.昨年度に引き続き,神経変性疾患の1つであるパーキンソン病に注目して研究した.パーキンソン病では,α-シヌクレインの凝集と繊維化が発病に関連していると考えられている.凝集したα-シヌクレインがムチン型糖鎖を持つ可能性が指摘されているため,4種のGalNAc転移酵素アイソザイムを用いてin vitroでの糖付加反応を調べた.昨年度に比べ反応条件をより最適化することで,神経系に特異的なアイソザイムの1つであるGalNAc-T13がα-シヌクレインを基質とすることを見いだした.また,GalNAc-T13と相同性が高いGalNAc-T1も同程度の活性を示した. 2.神経系における糖付加反応機構を解析する目的で,GalNAc-T1のレクチン様ドメインの機能を調べた.種々の糖を固相化した樹脂を用いて調べたところ,同アイソザイムのレクチン様ドメインは,GalNAcおよびMan残基に対して,結合活性を持っていることが明らかとなった.また,この結合はUDPにより阻害されることも見いだした.これらの結果は,ムチン型糖鎖付加反応において,レクチン様ドメインが基質との結合に重要な役割を果たしていることを示している. 3.最後に,ファージディスプレイ法を用いてGalNAc転移酵素の基質となりうる脳内ペプチドのスクリーニングを行った.しかしながら現段階では,非特異的な吸着が高く,特異的なペプチドを単離するには至っていない.
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