アルツハイマー病(AD)の病理所見として多数の老人斑の形成、そしてその周辺へのミクログリアの集積が挙げられる。このため、AD治療・予防の観点からも、このバランス調節機構を理解することは重要である。私たちは、in vivo系におけるAβプラークの形成とミクログリアの関係を解析した。PSAPPトランスジェニックマウスの脳内において、著しいAβプラークの形成およびそのプラークへの活性化ミクログリアの集積が認められた。しかしながら、この変異マウスでは顕著な神経細胞の脱落は認められていない。また、Aβ1-42(Aβ42)を海馬実質内に投与したラットにおいてもAβプラークおよび活性化ミクログリアの集積が確認されたが、脳内Aβ42量は時間依存的に減少していった。ラット海馬実質内へのAβ42投与による検討では、Hsp90の同時投与により脳内サイトカイン量の増加およびAβ42量の減少促進が示された。活性化ミクログリアによる炎症性サイトカインはADにおける神経細胞死を誘導すると考えられてきたが、近年では一部の炎症性サイトカインの神経保護作用が明かとなっている。さらに、ADにおけるAβワクチン療法の検討では、Aβプラークに結合した抗Aβ抗体がミクログリアを活性化しAβ貪食作用を促進するメカニズムが提唱されている。以上のことから、活性化ミクログリアはADにおいて代償性神経保護に関与することが示唆される。 また、脳梗塞モデルの中大脳動脈閉塞ラットに培養ミクログリアを脳室内に微量注入すると、線条体および大脳皮質の神経細胞死が抑制された。このように、ミクログリアには神経保護作用を持つことが明らかとなった。
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