研究概要 |
スギ花粉を抗原としたモルモット・アレルギー性鼻炎モデルでは,スギ花粉の吸入後に,ヒトの病態に類似して,2相性の鼻閉が発現する。このうち遅発性の鼻閉は重症・慢性化した花粉症患者において特徴的な症状であり,患者のQOLを悪化させる症状の1つである。これまでに我々は,この遅発性の鼻閉の発症にアラキドン酸代謝物であるcysteinyl leukotrienes(CysLTs)およびthromboxane(TX)A_2が関与することを明らかにしてきた。本研究ではこれら2つのメディエーターが相互作用を及ぼしあって鼻閉の発現に関与するか否か,ならびにその相互作用のメカニズムについて検討した。 (1)CysLT_1受容体拮抗薬(pranlukast)およびTP受容体拮抗薬(seratrodast)をそれぞれ単独で投与した場合,遅発性の鼻閉を約50%抑制したが,両薬物を併用してもそれぞれ単独処置の場合と同程度の抑制がみられるにすぎなかった。この成績はCysLTsがTXA_2の産生を介して(もしくはその逆)いるか,あるいはCysLTsとTXA_2が効果器(鼻粘膜)において相乗的に作用することで鼻閉を誘起しているか,のいずれかが考えられる。 (2)鼻粘膜における遅発性のTXA_2産生はpranlukastで,またCysLTsの産生はseratrodastで,いずれも何ら抑制されなかった。 (3)モデル動物に低濃度のLTD_4およびU-46619(TXA_2の類似薬)をそれぞれ単独で点鼻した場合,ほとんど鼻閉は誘起されなかったが,同濃度の両アゴニストを併用で点鼻すると,顕著な鼻閉が認められた。 以上より,遅発性の鼻閉はCysLTsとTXA_2が鼻粘膜において相乗的に作用することによって誘起されている可能性が強く示唆された。これらの成績はアレルギー性鼻炎の鼻閉の緩解に向けた新規治療薬の開発に有用であると考えられる。
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