研究概要 |
我々が開発してきたスギ花粉を抗原としたモルモット・アレルギー性鼻炎モデルでは,ヒトの病態に類似して,花粉の吸入直後にくしゃみが,吸入1〜2および4〜6時間後に2相性の鼻閉が発現する。さらに,惹起10時間〜2日後に非特異的刺激に対する鼻過敏症が発症する。これらの症状のうち,患者の生活の質を悪化させる鼻閉および鼻過敏症の発症に奏功する治療薬は副作用が多いステロイド性抗炎症薬のみである。 そこで本研究では鼻閉および鼻過敏症の発症機構の解明を目的として,種々のmediatorsの関与について検討するとともに,これらの症状の治療法として経口免疫療法の有用性について検討し,主として以下の成績を得た。 1.鼻過敏症は,反復の惹起により鼻粘膜に発現増強するB_1受容体ならびに構成的に発現するB_2受容体を,抗原惹起後に即時性に産生されるブラジキニンなどのキニン類が刺激することによって発症することが強く示唆された。 2.遅発性の鼻閉はアラキドン酸代謝物であるシステイニルロイコトリエンとトロンボキサンA_2が鼻粘膜において相乗的に作用することによって誘起されている可能性が強く示唆された。 3.反復の花粉吸入による反応惹起期間中に花粉エキスを経口投与する(経口免疫療法)と,鼻閉および鼻過敏症の発症を強く抑制することが明らかとなった。 以上より,鼻閉には上記のアラキドン酸代謝物が主要な役割を演じ,一方,鼻過敏症の発症にはキニン類が大きく関与することが明らかとなった。とくにキニン類に対する拮抗薬などは未だ臨床では使用されておらず,新規の治療薬となりうる可能性がある。さらに,本研究で明らかとなった経口免疫療法の鼻閉および鼻過敏症に対する有用性より,今後の経口免疫療法の臨床におけるさらなる検討を期待したい。
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