研究概要 |
活性型ビタミンD(1α,25-D_3)およびその誘導体を癌治療薬および予防薬として応用するためには、癌細胞転移・浸潤抑制機構を明らかにし、さらに作用の選択性(正常細胞と腫瘍細胞)や副作用(高Ca血症)の低減化などを解決する必要がある。我々は、1α,25-D_3を基盤とする癌治療薬を開発することを目的に、癌細胞に対する転移・浸潤抑制機構の解明と、癌治療薬としての安全性や副作用に拘る問題点を解決するため本研究を開始した。平成16年度は、1α,25-D_3による腫瘍形成抑制作用について、緑色蛍光蛋白質(GFP)安定形質導入マウス肺癌(Lewis lungcarcinoma)細胞(LLC-GFP)を用いて、増殖・転移・血管新生の点から作用メカニズムを解析するとともに、in vivoにおける有効性を解析した。さらに、Ca代謝調節能の弱いビタミンD誘導体(22-oxacalcitriol)の腫瘍形成抑制作用を評価した。また、ビタミンDの新規代謝物の検索を行った。研究成果は以下の通りである。 1)1α,25-D_3がビタミンD受容体(VDR)を介して、LLC-GFP細胞の細胞周期をG1期に停止させることにより増殖を抑制し、Matrix metalloprotainase-2,-9発現を抑制することにより転移を抑制し、血管新生促進因子の発現を抑制することにより血管新生を抑制することを明らかにした。 2)VDR遺伝子欠損マウスを腫瘍形成評価モデル動物に用いることにより、1α,25-D_3の腫瘍形成抑制作用にCa代謝調節作用は関与しないこと、血中1α,25-D_3濃度と腫瘍形成量が負の相関性を示すことを明らかにした。 3)22-oxacalcitriolが高Ca血症を惹起することなく、腫瘍形成を抑制することを明らかにした。 4)25-Hydroxyvitamin D_3および1α,25-D_3が側鎖24位の水酸化だけでなく、3位水酸基の異性化によっても不活性化されることを明らかにした。 以上より、1α,25-D_3やその誘導体が癌治療・予防に有効であることをin vitro及びin vivoで明らかにした。
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