細胞は増殖と分化の二面性を持つ。TBR 31-2は、 SV40の温度感受性T抗原遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの未分化間葉系細胞より分離され、増殖時と分化時の培養条件が異なる特色を持つため増殖と分化の明確な区別が可能な細胞である。このようなTBR 31-2細胞に存在するGPI-アンカー:蛋白質の分離精製とその同定を目的として実験を行った。 まず、増殖時期のTBR 31-2細胞の細胞膜で発現しているGPI-アンカー蛋白質の構造解析のために、増殖時期のTBR 31-2細胞を大量に培養して細菌由来のPI-PLC処理により可溶化したGPI-アンカー蛋白質を濃縮、脱塩しNuPAGE Tris-Acetate Pre-CastゲルとTris-Acetate buffer系の組み合わせでSDS-PAGE電気泳動後、HRPで標識したストレプトアビジンを用いたECLウエスタンブロッティング法で検出を行った。その結果、分子量約175kDa、155kDa、140kDa、98kDa、95kDaの5種類の蛋白質が存在することが判明した。 一方、前回の実験により分化時期には、分子量約120kDa、112kDa、96kDa、60kDaの4種類の蛋白質が存在することが判明している。アルカリ性ホスファターゼは同じ分子量のサブユニットから成る二量体であることが知られているので、分子量60kDaのものは、おそらくアルカリ性ホスファターゼの単量体であると考えられる。このように増殖および分化時期で発現しているGPI-アンカー蛋白質は分子量において異なることが判明した。 今後はこれらの蛋白質を分離精製し、TOF型質量分析計による解析する予定である。
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