TBR31-2細胞は、温度感受性SV-40 T-抗原を導入した間葉系幹細胞で培養温度を変化させると増殖と分化を制御することが可能である。また、培養条件により骨芽細胞や脂肪細胞へと分化する多分化能を持つ。このような細胞に細菌の生産するホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI-PLC)を作用させると分化や増殖が阻害される。すなわち、細胞質膜に存在するグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)-アンカー蛋白質をPI-PLCで特異的に可溶化すると増殖や分化が阻害されることから、GPI-アンカー蛋白質は増殖、分化に関与している可能性が示唆された。TBR31-2細胞を骨芽細胞へ分化させると、骨芽細胞の分化マーカーであるアルカリ性ホスファターゼ(ALP)以外に分子量55および41kDaのGPI-アンカー蛋白質が検出された。現在、ゲル内トリプシン消化し、得られたポリペプチドをTOF型質量分析計にて同定中である。 酪酸ナトリウム(SB)は培養細胞をG1およびG2期で増殖を停止させる作用があると報告されている。これまでの研究によりヒト子宮頸癌由来のHeLa細胞にSBを作用させると、ALPが誘導され増殖阻害作用を起こすことを確認している。そこでHeLa細胞にSBを作用させた後、GPI-アンカー蛋白質をビオチン化してPI-PLCで可溶化する。可溶化されたGPI-アンカー蛋白質をSDS-PAGEで分離後ウエスタンブロット法による検出を行った結果、分子量38と63kDaの蛋白質が確認された。63Daの蛋白質はヒト抗胎盤型ALP抗体を用いたECLウエスタンブロット法で胎盤型ALPであると同定された。また、38kDaの蛋白質はゲル内トリプシン消化し、得られたポリペプチドをTOF型質量分析計で分離し検索エンジン「MS-Fit」で解析すると葉酸受容体であることが判明した。
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