新規のμオピオイド受容体内在性アゴニストとして発見されたエンドモルフィンの疼痛伝達・制御における役割を明らかにする目的で、マウス脳シナプス膜標品によるエンドモルフィン-1の代謝過程を明らかにした。 1.マウス脳シナプス膜標品によるエンドモルフィン-1の代謝 マウス脳シナプス膜標品によるエンドモルフィン-1(Tyr-Pro-Trp-PheNH_2)の分解を解析した結果、主要代謝産物として、Tyr-Pro、PheNH_2、Tyr、Trpが検出された。また、これら主要代謝産物の生成はジペプチジルペプチダーゼIVの特異的阻害剤で抑制された。 2.ジペプチジルペプチダーゼIVによるエンドモルフィン-1の分解 ジペプチジルペプチダーゼIVの酵素精製標品によるエンドモルフィン-1の分解を解析したところ、Trp^2-Phe^3結合の切断に由来する、Tyr-Pro、Trp-PheNH_2のみが生成された。 3.エンドモルフィン-1の脳室内投与によって誘発される侵害刺激抑制作用に対するジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の効果 エンドモルフィン-1の脳室内投与によって誘発される侵害刺激抑制作用に対するジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の効果を解析したところ、用量依存的に侵害刺激抑制作用を増強させた。 以上の結果より、マウス脳シナプスにおいてエンドモルフィン-1は、ジペプチジルペプチダーゼIVにより不活性化されることが明らかになった。新しいタイプの鎮痛剤として、ジペプチジルペプチダーゼIV特異的阻害剤もしくはジペプチジルペプチダーゼIV分解抵抗性のエンドモルフィンアナログの有用性が期待される。
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