研究課題
動物の卵母細胞には発生に必要な蛋白質を作るためのmRNAが翻訳されずに多量に貯蔵されている。Yボックス蛋白質は卵母細胞でmRNAに結合して貯蔵mRNP(messenger ribonucleoprotein particle)を構成している主要な蛋白質で、mRNAの安定化や翻訳調節に関与することが知られている。今回我々は、カタユウレイボヤのYボックス蛋白質CiYB1に対する抗体を作成し、卵や初期胚の免疫染色を行った。CiYB1は細胞質全体に存在するが、特に後極に強いシグナルが観察された。ホヤ卵後極には発生に重要な母性細胞質因子であるmRNAが局在している。実際、後極に局在することが知られるCi-macho mRNAやCipem mRNAはCiYB1蛋白質と共局在を示し、生化学的にも複合体を形成していることがわかった。ホヤの卵母細胞や初期胚のライセートをNicodenz平衡密度勾配遠心で分画してCiYB1の分布を調べたところ、発生の進行とともに貯蔵mRNPから離れ、リボソーム画分や、RNAと結合していない蛋白質の画分に移行した。これはCiYB1の解離が母性mRNAの翻訳開始に重要であることを示唆する結果である。一方、培養細胞を用いてYボックス蛋白質の機能を明らかにするため、これまでにトリDT40細胞のYB1遺伝子破壊株を作成し、細胞増殖が遅くなることを明らかにしている。この遺伝子破壊株にエピトープタグつきのYB1を発現させ、免疫沈降でYB1を含む複合体を調製した。この複合体に含まれる因子の同定をすすめた。
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