原子間力顕微鏡を利用したATP受容体の分子薬理学

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15590089
• 研究機関: 国立医薬品食品衛生研究所
• 研究代表者: 中澤 憲一 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部第2室, 室長 (00198061)
• キーワード: ATP受容体 / イオン・チャネル / タンパク質 / 原子間力顕微鏡 / 構造改変

研究概要

原子間力顕微鏡観察のための試料とするため,ATP受容体チャネル(P2X受容体)の発現/精製方法の検討を行なった.受容体タンパク質を標識するため,cDNAをヒスチジンタグ用のプラスミドに組み込んだ.このプラスミドを大腸菌に取り込ませて大量発現を試みたが,十分な量の受容体タンパク質を得ることはできなかった.アフリカツメガエルの卵母細胞を発現系とした場合,比較的多くの量のタンパク質を得ることができたが,精製後も夾雑物が多く,試料には不適当と判断された.昆虫由来のSf9細胞を発現した場合,精製度の高い受容体タンパク質を充分に得ることができた.このタンパク質を適当な濃度に希釈し,劈開雲母上に滴下/減圧乾固した試料を原子間力顕微鏡観察したところ,径20ナノメートルほどの分散した粒子像とこれが会合したと思われる高さ4ナノメートルほどの台地状の像が得られた.粒子像はATP受容体と同程度の分子量を持つトランスフェリンの粒子像の大きさとほぼ一致しており,よって,これはATP受容体タンパク質の姿であると判断された.また,これと並行して行なった受容体タンパク質に改変を加え性質の変化を調べる研究では,ATP受容体の細胞内の2つシステイン残基のうちN末側の残基が酸化状態にあり,正常な感受性を維持していることが明らかとなった.また,細胞外の必須のジスルフィド結合の下流領域について,データバンク解析から予測されていたβシート構造を取ることが実験的に示された.

研究成果

• [文献書誌] Nakazawa, K., Ojima, H., Ishii-Nozawa, R., Takeuchi, K., Ohno, Y.: "Intracellular disulfide bond that affects ATP responsiveness of P2X2 receptor/channel"Eur.J.Pharmacol.. 474. 205-208 (2003)
• [文献書誌] Nakazawa, K., Ojima, H., Ishii-Nozawa, R., Takeuchi, K., Ohno, Y.: "Amino acid substitutions from an indispensable disulfide bond affect P2X2 receptor activation"Eur.J.Pharmacol.. in press. (2004)
• [文献書誌] Nakazawa, K., Ohno, Y.: "Block by phytoestrogens of recombinant human neuronal nicotinic receptors"J.Pharmacol.Sci.. 93. 118-121 (2003)
• [文献書誌] Sato, K., Matsuki, N., Ohno, Y., Nakazawa, K.: "Estrogens inhibit L-glutamate uptake activity of astrocytes via membrane estrogen receptor alpha"J.Neurochem.. 86. 1498-1505 (2003)
• [文献書誌] Akaishi, T., Nakazawa, K., Sato, K., Saito, H., Ohno, Y., Ito, Y.: "Hydrogen peroxide modulates whole cell Ca2+ currents through L-type channels in cultured rat dentate granule cells"Neurosci.Lett.. 356. 25-28 (2004)
• [文献書誌] Akaishi, T., Nakazawa, K., Sato, K., Saito, H., Ohno, Y., Ito, Y.: "Modulation of voltage-gated Ca2+ current by 4-hydroxynonenal in dentate granule cells"Biol.Pharm.Bull.. 27. 174-179 (2004)