研究課題
【目的】コフィリンは、分子量19kDaのアクチン結合蛋白で、酵母や粘菌から哺乳度物細胞のあらゆる組織まで極めて普遍的に存在する。F-アクチンの切断・脱重合の活性をもつが、リン酸化されるとその活性はなくなる。最近、リン酸化を担う特異的酵素としてLIMキナーゼが、脱リン酸化を担う特異酵素としてSlingshotが同定された。我々は、刺激を受けた白血球においてコフィリンは、脱リン酸化、再リン酸化の制御を受け、活性酸素の産生や異物の貪食に深く関与することを明らかにしてきた。しかし、白血球の重要な機能の一つである走化性については、コフィリンがどのように関与するか不明である。そこで、本研究では白血球(好中球)の走化性運動におけるコフィリンの役割について検討した。【方法】コフィリンのsiRNAを、5種類デザインし(いずれも21mer)、細胞への導入にはトランスフェクション試薬TransIT-TKOを用いた。食細胞としては、ヒト培養未分化白血球HL-60細胞を、ジメチルスルホキシドおよび顆粒球コロニー刺激因子存在下に6日間培養して使用した。走化性因子としては、インターロイキン8(IL-8)使用し、走化性アッセイは96穴チャンバーで行った。【結果】分化誘導開始4日目の細胞にコフィリンsiRNAを導入し、6日目の細胞のコフィリンレベルをウェスタンブロッティングで調べた結果、約50%の低下が認められた。その細胞の走化性アッセイを行った結果、活性は低下していた。【結論】前年度報告した結果と総合して、食細胞がIL-8に対して走化性運動を起こす場合、コフィリンは一過性の早い脱リン酸化とそれに続く再リン酸化というリン酸の早い代謝回転制御を受けること、細胞膜直下でF-アクチン形成を調節することにより、走化性運動に不可欠な役割を果たしていることが示された。
すべて 2004
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