研究概要 |
CCK-A受容体遺伝子多型(-81A to G,-128G to T)を胆道、膵を中心とした消化器疾患において検討した。アルコール依存症では、-81A to Gが多く、しかもGを持つ個体は、依存症の発症年齢が低く、家族歴が濃厚で、反社会的性格や譫妄を有する頻度が高かった。一方慢性膵炎、膵癌では有意の発生頻度の変化はみられなかった。胆嚢癌は症例がなかった。ラットでは、胎性期にはCCK-A受容体遺伝子発現はみられないが出生後約1週間目頃よりCCK-A受容体遺伝子発現する。このCCK-A受容体遺伝子発現の調節には、遺伝子のメチル化が関係している。我々は、覚醒ラットにおいて、膵液胆汁を別々に採取する実験システムを確立し、膵外分泌機能を検討してきた。CCK-A受容体遺伝子ノックアウトマウスでも、膵外分泌はアセチルコリンやgastrin releasing peptideなどにより増加したが、胆嚢収縮は起こせなかった。CCK-A受容体ホモ欠損マウスでは肥満にはならないが、有意の高頻度で胆石が形成された。CCK-A, B, AB受容体遺伝子ノックアウトマウスの胃排出機能を液体飼料、固形飼料の胃排出速度、および、CCK-8,gastrin、アトロピンの効果を比較した。結果は、CCK-B欠損では胃排出速度が早く、A欠損では変化がなかった。B欠損マウスでは自律神経のバランスがくずれているため、と予測した。一方CCK-A受容体欠損マウスでは、ストレス負荷により、回復時の摂食量の増加が認められた。同時期の胃排出速度は亢進しておらず、この摂食増加は、中枢性に生じていると予測された。CCK-A受容体遺伝子ノックアウト[CCK-AR(-/-)]マウスにおけるストレス負荷時の摂食量の変動を検討し、CCK-ARを欠損すると、強度のストレス負荷時には、過食となることが確認された。この原因は、胃排出速度遅延によるものではなく、中枢性調節の変化によって生じていると判断できた。
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