研究概要 |
モンシロチョウに存在する分子量98,000の蛋白質、ピエリシン-1、は種々のがん細胞に対してアポトーシスを誘導し、細胞傷害活性を示す。中でもヒト子宮頸部がんHeLa細胞は、50%増殖阻害濃度が0.043ng/mlと、最も高い感受性を示した。そこで、in vivoにおけるピエリシン-1の抗腫瘍活性を調べる目的で、ピエリシン-1の実験動物に対する毒性の解析を行った後、移植がん細胞に対するピエリシン-1の抗腫瘍効果を調べた。ピエリシン-1を単回腹腔内投与した場合のBALB/cマウスに対するLD_<50>値は約5μg/kg body weightであった。静脈内投与した場合も同様であった。皮下投与の場合の毒性は腹腔内の約1/50であった。続いて抗腫瘍効果を調べるため1x10^7個のHeLa細胞を6週齢BALB/c雌ヌードマウスの腹腔内に移植した。翌日、3μg/kg body weightのピエリシン-1を単回、腹腔内投与した。腫瘍移植後80日目にマウスを屠殺し、腫瘍を採取し、その重量を計測した。その結果、ピエリシン-1非投与群では全例(10/10)に腫瘍が確認され、その平均重量は1.16gであった。一方、ピエリシン-1投与群では10例中3例に肉眼上腫瘍を認めなかった。また、1例では腹膜に2mmの小結節を認めたのみであった。ピエリシン-1投与群の平均腫瘍重量は0.56gであり、有意に低下していた。以上より、ピエリシン-1はHeLa細胞に対し、in vivoで抗腫瘍活性を示すことが分かった。
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