研究概要 |
著者は以前、HIVの侵入阻害剤{T細胞指向性HIV-1(X4-HIV-1)の細胞への侵入を阻害するCXCR4アンタゴニスト}であるアミノ酸14残基ペプチドT140とその生体内安定型ペプチド4F-benzoyl-TN14003,4F-benzoyl-TE14011を発見した。このT140のpharmacophore Arg^2,Nal^3,Tyr^5,Arg^<14>を含む低分子誘導体である環状ペンタペプチドFC131も見い出した。今年度、FC131の環状ペンタペプチドを基にして環のサイズを小さくするために、Nal-Glyのジペプチド部位をγ-アミノ酸で置き換えた一連の環状テトラペプチドを合成し、さらなる低分子の高活性リード化合物を見い出した。また、FC131の側鎖の官能基の最適化をはかるため、D-Tyr残基の芳香環部位を種々変えた誘導体や、2個のArg残基の側鎖の長さを変えた誘導体、立体的に固定化した誘導体、グアニド基を他に変換した誘導体等を合成した。各pharmacophoreの構造活性相関の情報を得るとともに、有用な新規リード化合物を得た。さらに最近、CXCR4とその内因性リガンドSDF-1/CXCL12との相互作用が、種々の癌細胞の転移や浸潤および慢性関節リウマチの憎悪に深く関与していることが報告された。そこで、4F-benzoyl-TN14003と4F-benzoyl-TE14011を用いて、種々の癌細胞の転移とリウマチ関節炎のマウス動物モデルにおいて活性を評価した。その結果、本CXCR4アンタゴニストは癌細胞の転移と関節炎に対して有意な抑制作用を示し、in vivoで顕著な活性を発揮することがわかった。以上今年度は、T140、FC131を基盤とした低分子化を行い、また、これらの化合物のHIV侵入阻害剤、癌転移抑制剤および慢性関節リウマチの治療薬としての有効性を評価した。
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