研究概要 |
9-(5',5'-difluoro-5'-phosphonopentyl)guanine (DFPP-G)は、グアニンとリン酸ミミック(CF_2P(O)(OH)_2)をアルキルスペーサで連結した構造を有し、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)の活性中心のpurine binding siteとphosphate binding siteに基質と競合的に結合することによりPNP阻害活性を示す。DFPP-G・PNP複合体のX線結晶構造解析から、アルキルスペーサは疎水性アミノ酸残基で取り囲まれていることが明らかとなった。これらの知見を基盤として新規PNP阻害剤の創製を目的に、DFPP-Gおよびそのヒポキサンチン類縁体(DFPP-H)のアルキルスペーサ部に疎水基を導入した類縁体の構造活性相関を検討したところ、2'位に疎水基を導入するとPNP阻害活性が高まることが明らかとなった。DFPP-Gの化学修飾に有用な情報を得ることが出来た。一方、X線結晶構造解析の結果から、核酸塩基部はpurine binding siteと1分子の水を介する水素結合で結合していることが明らかとなった。そこで、核酸塩基部とpurine binding siteとの水素結合がより強固になることを期待して、核酸塩基部を9-デアザグアニンに置換したDFPP-G類縁体(DFPP-DG)を設計し、合成を検討した。末端に二重結合を有するジフルオロメチレンホスホン酸誘導体と9-ヨード-9-デアザグアニン誘導体のHeck反応はDFPP-DGに誘導可能なクロスカップリング成績体を与えることを見いだした。今後の展開が期待される。その他、当研究室で見いだされたスフィンゴミエリナーゼ(SMase)阻害活性を有するセラミド-1-ホスフェートのジフルオロメチレンホスホン酸誘導体の大量合成法を確立し,分子薬理的研究を行った。このSMase阻害剤はTNF-αによって惹起される神経細胞のアポトーシスに対して改善効果を有することが明らかになった。
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