研究概要 |
ゲノム・プロテオーム情報から得られる受容体・酵素等の創薬シーズ情報を有益に活用し、受容体・酵素に作用する優れた低分子化合物を創造することが、分子認識を基盤とする21世紀の創薬において重要である。そこで本研究課題では、がんやエイズのような難知性疾患の新規治療剤の開発をめざした低分子化合物を創造する上で、多様な分子機能を兼ね備えた分子プラットホームとしてジケトピペラジンを提案した。そして、ジケトピペラジンの生体機能発現分子プラットフォームとしての有用性を検証するために、その新規簡便合成法の確立、及び新規抗腫瘍医薬品候補化合物の獲得に挑戦した。その結果、1)ジケトピペラジン類の中でも、1個のデヒドロ構造を有するモノデヒドロ-2,5-ジケトピペラジン類の簡便合成法を開発することができた。2)実際にこの合成法を天然由来の抗腫瘍物質であるフェニラヒスチンの光学活性誘導体の合成を行ったところ、高不斉収率での合成に成功した。3)強力な抗腫瘍活性を有するジケトピペラジ誘導体の構造最適化を進め、代謝酵素であるCytochrome P450に認識されやすいイミダゾール構造を、オキサゾール環構造に変換した新規ジケトピペラジ誘導体を見いだした。4)抗腫瘍化合物に関しては、プロドラッグ化の一般研究も行っており、高い水溶性を有する抗チューブリン剤の合成に成功した。5)また、ジケトピペラジンの原料となる光学活性アミノ酸合成に有益な新規な固相担持型不斉補助基を開発した。
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