研究概要 |
現在生活習慣病の中で、肥満・糖尿病及びその合併症は、最も深刻な問題であり、ショ糖に代わる、代替甘味物質の研究はきわめて重要である。植物由来の天然物で、低カロリーの甘味としては、従来、パラグアイ産キク科植物ステヴィアの葉から得られるditerpenoid glycosideであるstevioside類が多く利用されてきている。一方、中国広西壮族自治区の特産植物であるMomordica grosvenoriはウリ科植物であり、その完熟果実は、羅漢果と称され、現地では咽頭痛、扁桃腺痛などの緩和、小児に対する緩下剤として古来利用されてきた民間薬の一つである。この羅漢果にはcucurbitan型のtriterpenoid配糖体が多量に含まれ、ショ糖の数百倍の甘味を有することが知られている。我々は、本年度広西壮族自治区以外で市販される乾燥羅漢果を調査し、明らかに別種のものが同名で市販されていることも明らかとした。さらに、同自治区産の新鮮果実より4種の配糖体(mogroside IV, V,11-oxo-mogroside V, siamenoside)を単離し、それらの抗発がんプロモーター作用を比較した。なかでも、11-oxo-mogroside Vには顕著な抗酸化作用と共に、peroxynitriteにより誘起されるマウス二段階発がんにおける、発がんイニシエーションに対する抗発がんイニシエーター作用が明らかとなった。また、糖尿病患者の血清中に高濃度に出現し、それ自体が発がんイニシエーターとなるAdvanced Glycation Endproduct(AGE)に対する抗発がんイニシエーター作用についても、対称群と比較し、40%以上の抑制効果と発がん遅延効果が顕著であることを明らかとした。本研究により、羅漢果含有甘味成分が、発がん予防物質としての可能性を有することが明らかとなった。
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