研究概要 |
交付申請書に記載した本年度の研究実施計画に従い、研究を開始した。すなわち容易に入手可能なα-iononeを出発原料として、m-クロロ過安息香酸による4,5位(レチノイド-カロテノイド系ナンバリングによる)の選択的なエポキシ化の後、アルカリ処理して4-hydroxy-β-iononeを71%の収率で得た。生じた水酸基をアセチル化後、水素化ホウ素ナトリウムを用いて9位カルボニル基を還元し、t-butyldimethylsilyl基で保護し、続いて水素化リチウムアルミニウムでアセチル基を除去した後、二酸化マンガンで酸化して収率よく4-keto体へ変換した。次に4-keto体をLDAで処理してオキサジリジン化合物を作用させて、3-hydroxy-4-keto体へ94%の収率で導いた。続いて、IBXを用いて3位水酸基を酸化して3,4位をカルボニル基とした。このとき、^1H-NMRの測定により3位はエノール化していることが判明した。この化合物のエノール化している2,3位をエポキシ化しようと種々検討したところ、Triton Bを塩基として過酸化水素を作用させる条件が最もよいことがわかったが、収率は38%までしか向上しなかった。得られたエポキシ体をジオール体へ導くために条件検討を重ねたが、目的の化合物は得られなかった。この結果から、酸素官能基を4位から3位及び2位へと順次導入していく経路は、立体障害等による困難さが伴うのではないかと考えられる。今後は、合成の初期段階で2位に酸素官能基を導入する合成法を確立し、目的化合物への誘導、得られた化合物の抗酸化作用の検討を行う予定である。
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