研究概要 |
交付申請書に記載した本年度の研究実施計画に従い、研究を開始した。まず、文献の方法に従い、2,2,6-trimethylcyclohexane-1,3-dioneを収率よく合成した。続いて、L-selectrideを用いて、3位のカルボニル基のみを選択的に還元し、生じた水酸基をt-butyldimethylsilyl(以後TBS)基で保護した。次に、リチウムヘキサメチルジシラジドを塩基として、N-フェニルトリフルオロメタンスルホンイミドを作用させ、トリフレート体へ導いた後、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウムを触媒として、メチルビニルケトンとのカップリング反応を行い、2-hydroxy-β-ionone(レチノイド-カロテノイド系ナンバリングによる)TBSエーテルを合成した。続いて、このエーテルを4-ブロモ体へ変換した後、これを4-hydroxy体もしくは、3,4-dehydro体に導こうと種々検討したが、目的化合物は全く得られなかった。そこで、2-hydroxy-β-iononeTBSエーテルの2位のTBS基を脱保護しアセチル化後、9位カルボニル基を還元して水酸基とし、続いてTBS基で保護した。さらに2位のアセチル基を還元し、IBX(o-iodoxybenzoic acid)で酸化して2-ケト体を高収率で合成した。次に、3位へ酸素官能基を導入するために、2-ケト体をシリルエノールエーテルとした後、MCPBAで酸化、続く酸処理でα-ケトアルコール体へ導いた。その後、3位水酸基をアセチル化し、2位カルボニル基を還元、生じた水酸基をTBS基で保護した後、3位アセチル基を還元、酸化して3-ケト体とした。最後に、4位に酸素官能基を導入するために、シリルエノールエーテル経由による水酸基の導入の検討、カルボニル基のα位に直接水酸基を導入する方法などを検討したが、残念ながら現在のところ目的化合物の合成には至っていない。
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