研究概要 |
アレルギー治療薬の開発に貢献できるアッセイ法の確立を目的として、卵白リゾチーム(HEL)を用いて1回の感作後、すなわちアレルギーのプロモーションの段階で末梢血管(静脈微小循環)の血流量が顕著に低下するマウスモデルを作製した。さらに末梢血管の血流低下メカニズムの解明を行い、以下の知見を得た。 1.血流量に関与する阻害薬を用いて、血流量低下にはNO, COX-1,2およびPGI-2が関与するが,ヒスタミン,セロトニン,PAFなどのケミカルメディエーターはほとんど関与しないことを確認した。 2.感作後のマウスの血中NO_x(NO_2+NO_3)産生量の変化をGriess法により測定したところ,血清中のNO_x量は3日目から増加し始め,それに伴って血流量の低下が認められた。 3.炎症,アレルギーなどで誘導される誘導型NO合成酵素(iNOS)の増加を予測し,血中NO量が最大となる感作後9日目のマウスのiNOS蛋白発現をwestern blot法を用いて測定した結果,血流量測定部位の尾部血管には発現が認められなかったが、胸部・腹部大動脈に発現を確認した。したがって、感作によりiNOSが誘導されていることを明らかにした。 4.選択的iNOS阻害剤である1400Wが感作マウス血流量低下に影響を及ぼさなかったこと、およびiNosノックアウトマウスにおいてHEL感作により血流低下が認められたことから、血流量低下にiNOS発現が必須でないことを明らかにした。 5.エンドセリン-1(ET-1)の阻害剤BQ-123が血流量低下を改善させたことから、血流量低下にET-1による血管収縮が関与していることを明らかにした. 6.作製した新規抗アレルギープロモターのアッセイ系を用いて、天然資源よりスクリーニングを行い、数種の植物に活性を確認した。現在抗アレルギー剤のリード化合物となる可能性のある物質の単離を行っている。
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