研究概要 |
1.有機塩素系溶媒により飲料水質基準値レベルに汚染した飲水曝露に伴いI型アレルギーが増悪化されるかについてのPCA試験等様々な試験法による評価 テトラクロロエチレン(PCE),トリクロロエチレン(TCE)および1,1,1-トリクロロエタン(1,1,1-TCE)それぞれの水道水質基準値(それぞれ0.01mg/L,0.03mg/Lおよび0.3mg/L)およびその100倍濃度の低濃度汚染水をラットに2または4週間飲用させた後にPCA反応を行い、その増強率を比較した。結果、いずれの化合物においても用量依存的,期間依存的なPCA反応増強を認めた。また、PCEまたはTCEを同様の濃度で2週間飲用させたラットより皮膚を採取し、組織薄切切片を作成し、H&E染色およびアルシアンブルー染色により皮膚組織における病理組織学的検討を行った結果、汚染水の飲用群では、真皮においてリンパ球の著しい浸潤、また血管周辺部において肥満細胞の過剰な集積を認めた。 また、マウスにおいても上記と同様な条件でPCEまたはTCE低濃度汚染水飲用試験を行い、種差についての検討を行った結果、ラットと同様に用量依存的,期間依存的なPCA反応増強を認めた。また、その増強率はラットに比べて著しく高かった。 2.肥満細胞に対する塩素系有機溶媒曝露のサイトカイン産生に及ぼす影響の検討 抗DNP-IgE抗体で受動感作した培養肥満細胞(RBL-2H3)をPCEおよびTCEに曝露し、同時に抗原を添加することで抗原抗体反応を惹起した。6時間後の培養上清中のIL-4を測定した。結果、両化合物ともに水質基準値の100倍濃度において著しくIL-4産生が亢進した。 3.有機塩素系有機溶媒のRBL-2H3によるヒスタミン遊離に対する影響 抗DNP-IgE抗体で受動感作したRBL-2H3を低濃度有機塩素系化合物(水質基準値〜100倍濃度の範囲)に曝露した後、抗原を添加して抗原抗体反応を惹起してヒスタミン遊離量を測定した結果、PCE,TCEおよび1,1,1-TCEは、いずれも用量依存的にヒスタミン遊離率を増加させた。
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