研究概要 |
今回,表層土壌成分である二酸化チタン(TiO_2),シリカゲル(SiO_2),アルミナ(Al_2O_3)にそれぞれ塩素イオンと1-ニトロピレン(NP)を添加し,室内空気中2時間光照射したところ,GC/MSの分析により質量数m/z292の6ピークが検出された.3ピークは1,3-,1,6-,1,8-ジニトロピレン(DNP)と同定できた.残り3ピークのDNPの合成は,2-NPのニトロ化による方法で1,2-と1,7-DNPが,さらに4-NPをニトロ化し主反応物が光化学反応物に一致し,新規化合物2,4-DNPを得た. 次に,金属酸化物(Al_2O_3,SiO_2,TiO_2)の各照射時間(0-12時間)によるDNP類の消長を明らかにした.1-NPの残存量は照射時間と共に3種の金属酸化物とも減少していった.TiO_2やAl_2O_3では6種のDNP(1,2-,1,3-,2,4-,1,6-,1,7-,1,8-DNP)類の生成量はそれぞれ異なるが検出されたのに対し,SiO_2では2,4-DNPは検出されなかった.興味深いのは,もっとも変異原性が高い1,8-DNPの場合,SiO_2やAl_2O_3では,12時間まで生成量が増加するのに,TiO_2では10分照射が最も生成量が多く,12時間後には1/5に減少していた.予想通り,3種の金属酸化物中でのDNP類の生成が異なっていた.さらに,各反応抽出物の変異原性をSalmonella typhimurium TA98を用いて試験を行ったところ,Al_2O_3やSiO_2では抽出物の変異原性が6時間後には上昇したのに,最も反応性の高いTiO_2では減少するという興味深い結果が得られた.また,4種のクロロニトロピレンのうち,3種の構造を明らかにした. 表層土壌からは今回の1,2-,1,7-ならびに2,4-DNPは微量なため検出できなかったが,京都市の土壌中に3種のクロロニトロピレン(CNP)類を1,3-,1,6-および1,8-CNPと構造決定でき,還元後,HPLC蛍光分析により,それぞれ9.2-13.8,3.4-4.6,4.3-5.0pg/g土壌が得られるという興味深い結果が得られた.
|