免疫担当細胞における酸化的ストレス防御系および活性酸素種(ROI)産生レベルのバランスに基づいた細胞内レドックス状態と細胞応答機能との関連性を解明するとともに、環境化学物質などの外因性酸化的ストレスによる免疫攪乱影響評価系を確立する目的で研究を行った。まず、レドックス状態を知るための有効な指標を確立するため、2種類の細胞株を用い、緩和な酸化的ストレスとして1〜50μmol/L H_2O_2曝露で産生する細胞内ROIを各種の非特異的蛍光検出試薬による検討を行った結果、ヒト前骨髄球白血病HL-60細胞を用いた場合はcarboxy-DCFH-DAとフローサイトメトリー法によってROI産生が認められた。しかし、ヒトT細胞白血病Jurkat細胞においてはROI産生が認められず、同じ条件で酸化的ストレスを与えても細胞系の違いによってROI産生量に違いがあることが判明した。一方、HL-60細胞ではH_2O_2曝露によって細胞生存率が低下し、これはアポトーシス誘導に起因するものであった。また、低濃度H_2O_2曝露域において、ROI以外の指標の可能性を検討した結果、本法で検出された細胞内ROI産生とアポトーシス誘導との関連性のみが示唆された。一方、アポトーシスが誘導されたH_2O_2曝露濃度域において、TNF-αの産生が確認された。また、TNF-αを曝露することによっても細胞内ROI産生が認められた。そのため、TNF-α産生およびアポトーシス誘導と相関した細胞内ROIの産生が、本法によって検出されていることが判明した。 本研究においてヒト前骨髄球白血病HL-60細胞を用い、carboxy-DCFH-DAを用いたフローサイトメトリーによって検出される細胞内ROI産生が、免疫担当細胞のシグナル伝達やサイトカイン産生などの細胞応答と関連した細胞内レドックス状態を知るうえで有効な指標となり得ることが考えられた。
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