研究概要 |
温度応答性ポリマーは、相分離を起こす温度である下限臨界溶解温度(LCST)以下では溶解度が増加し、LCST以上では溶解度が減少する性質を持つ。本研究は、この性質を利用し、環境汚染化学物質に暴露した細胞で誘導される特異タンパク質を選択的に分離同定し、その量比により環境汚染有害物質の影響負荷を検討することを目的とする。 温度応答性ポリマーは、側鎖にブチルメタクリレート(BMA)またはN,N-ジメチルナミノプロピルアクリルアミド(DMAPAAm)を導入したN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAAm)を共重合させて作製した。PNIPAAm(分子量:10,000)、P(NIPAAm95%-co-BMA5%)(分子量:5000)、P(NIPAAm95%-co-BMA5%-co-DMAPAAm5%)(分子量:5000)、P(NIPAAm85%-co-BMA5%-co-DMAPAAm10%)(分子量:5000)の4極の温度応答性ポリマーを比較検討した。 LCST以上である40℃で温度応答性ポリマーに、HepG2細胞由来塩抽出タンパク質もしくはカエル血清タンパク質を結合させ、特異的に結合するタンパク質の有無と量をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動で比較検討した。タンパク質が結合した温度応答性ポリマーは、40℃で白濁非溶解状態にした後、室温、12,000rpm、15分の遠心により回収することができることが明らかとなった。1M NaCl以下の塩濃度の条件下では、温度応答性ポリマーとタンパク質の結合親和性に影響は認められなかった。4種の温度応答性ポリマーでは、PNIPAAm(分子量:10,000)が特異的なタンパク質を結合しており、その結合能および結合量において最も優れていることが明らかとなった。
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