環境汚染物質暴露影響を評価する系に関して、体内に取り込まれた際に最初に接触する組織として血球系への影響を検討した。ヒト白血病由来浮遊細胞HL60に2.5%ジメチルスルホキシドおよび10ng/mlヒトG-CSFを作用させることにより、4〜5日後、好中球様細胞へ選択的に分化誘導することができた。環境汚染物質に暴露することにより変動する指標タンパク質として、分化時に特異的に誘導されるCD18(インテグリンタンパク質)を対象として検討を行った。環境汚染物質として、17β-エストラジオール、ビスフェノールA、トリブチルスズ、ベンゾ[a]ピレンなどの内分泌系かく乱化学物質、ハロ酢酸類、塩素化フェノール類、有機リン系殺虫剤やアトラジン等の農薬類、50物質について、4日間暴露後の細胞致死率が約20%となる濃度で分化誘導開始時から継続暴露した結果、全ての化学物質でCD18の発現量としてタンパク量当たりで評価した場合、有意な増減は認められなかった。これらの結果は、PU.1転写因子を介する好中球様細胞への分化時には、検討した環境汚染化学物質の影響は少ないと考えられる。今後、化学物質暴露後に分化誘導を開始した場合や致死影響の出ない暴露濃度の応答について検討を進める。 マウス幹細胞について、心筋細胞への分化誘導のための無血清培地での培養条件を確定した。環境汚染物質に暴露することにより変動する指標タンパク質として、分化時に特異的に誘導されるタンパク質GATA4(転写因子)を同定し、前述の50物質の暴露による変動の検討を進めた。一方、マウス幹細胞から神経細胞への分化誘導を行う培養条件の検討を進めた。さらに、マウス10T1/2細胞から脂肪細胞への分化誘導時への影響、マウス視床下部癌化神経細胞に対する影響を評価するための培養条件と、対象とするタンパク質の同定を進めた。
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