研究概要 |
平成15年度の肥満細胞の高親和性IgG受容体を介する情報伝達系への環境化学物質の影響に関する研究から、下記の知見が得られた。 (1)イヌ皮下組織より由来したマスト細胞腫由来培養マスト(CM-MC)細胞を用いて、IgG受容体架橋形成に伴う細胞内に引き起こされる情報伝達について、細胞内カルシウム([Ca^<2+>]i)応答、タンパク質チロシンリン酸化反応、脱顆粒(ヒスタミン遊離)反応に焦点をあて、詳細な検討を行った。[Ca^<2+>]iは、イヌIgG/抗イヌIgG抗体の刺激において濃度依存性に上昇し、ヒスタミン遊離の至適条件と一致し、イヌIgE/抗イヌIgE抗体の刺激と同程度の応答を示した。タンパク質チロシンリン酸化反応では、38,62,70,80kDaの細胞内タンパク質のチロシンリン酸化の上昇が、抗イヌIgG抗体刺激後、1分並びに5分で、観察された。ヒスタミン遊離実験では、IgG感作濃度(至適濃度10μg/ml)、抗IgG抗体刺激濃度(至適濃度10μg/ml)、細胞外カルシウム濃度(至通濃度1mM)依存性を示し、反応時間は、5分で70%程度、30分で、ほぼ最大の応答を示した。 (2)CM-MC細胞のmRNAのRT-PCR analysisで、ヒトマウス、ウシのFcγRIの配列から予想される分子量のDNA断片を得ることができた。また、^<125>I-イヌIgG結合実験から、細胞あたりの受容体の数(7.5±3.1)x10^4個、親和性(Ka)(9.1±1.6)x10^7/Hの値が得られた。 以上、CM-MC細胞こおいて、単量体IgGの結合並びにその架橋形成による脱顆粒並びに情報伝達系の解析、mRNAのRT-PCR解析等により、高親和性IgG受容体(FcγRI)の存在が確認された。現在、FcγRI遺伝子の全塩基配列の解析並びに、FcγRI遺伝子発現への環境化学物質の影響に関する解析を進めている。
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