研究概要 |
平成16年度の肥満細胞の高親和性IgG受容体を介する情報伝達系への環境化学物質の影響に関する研究から、下記の知見が得られた。 (1)イヌ皮下組織より由来したマスト細胞腫由来培養マスト(CM-MC)細胞を用いて、単量体IgGの結合並びにその架橋形成による脱顆粒が起きること、また、^<125>I-イヌIgG結合実験及びmRNAのRT-PCR解析等により、高親和性IgG受容体(FcγRI)の存在を示唆するデータを平成15年度に報告したが、平成16年度は、FcγRI遺伝子の全塩基配列を決定した。3‘-RACEと5'-RACEにより決定されたイヌFcγRIα鎖の全cDNA配列は1119塩基対(GenBank accession number,AB101519)で、ヒト、マウスの同cDNAに対し、84,78%の相同性を持っていた。塩基配列から予想されたイヌFcγRIα鎖の一次アミノ酸配列は全372個のアミノ酸から構成され、ヒト、マウスのFcγRIα鎖と72,63%の相同性を有していた。N末端から293-303番目のアミノ酸残基は細胞膜貫通領域と推測され、細胞外領域には、イヌ、ヒト、マウスの三種間で高度に保存された6ケ所のシステイン残基が認められた。現在、イヌcDNAを哺乳動物用発現ベクターに組み込みRBL-2H3細胞に導入し、イヌ、ヒトIgG並びにヒトIgGサブタイプの結合実験を進めている。CM-MC細胞のFcγRI遺伝子発現への化学物質の影響に関しては、INF-γの影響について解析を加えている。 (2)CM-MC細胞の活性化を研究する過程において、塩基性ペプチドSubstance Pが本細胞からヒスタミン遊離能を有すること、百日咳毒素感受性の三量体Gたんぱく質を介する反応であることが判明した。現在、Substance P等の塩基性ペプチド前処理によるFcγRI遺伝子発現への影響についても解析を進めている。
|