5-HT1A受容体作動薬は、うつ病において抗不安効果を有する。この5-HT1A受容体作動薬性の抗不安薬であるタンドスピロンが、無動を主訴とするパーキンソン病に効果があったとする臨床報告が散見される。そこで、タンドスピロンの抗パーキンソン病効果を、6-OH-dopamineによる黒質-線条体破壊の片側パーキンソン病モデルラットにおいて検討した。 [方法]5週齢のWistarラットに6-OH-dopamineによる処置を行い、片側パーキンソン病モデルを作成した。1ヶ月以上経過してから、ドパミンD2受容体作動薬であるアポモルヒネによって40分間に150回以上破壊側に回転するラットを用いた。 [結果・考察]タンドスピロンは、用量依存的にパーキンソンモデルラットの破壊側への回転運動を促進した。また、5-HT1A受容体作動薬として知られる8-OH DPATも、タンドスピロンと同様に回転運動を誘発した。更に、タンドスピロン0.5mg/kg単独投与では著明な効果は観察されなかったが、アポモルヒネとの併用によりアポモルヒネ単独で得られる効果よりも有意に大きな抗パーキンソン効果を示した。また、タンドスピロンによる回転運動は、5-HT1A受容体特異的阻害薬であるWAY100635によって用量依存的に阻止された。一方、このWAY100635はアポモルヒネ誘発回転運動には影響を与えなかった。以上の結果から、タンドスピロンは5-HT1A受容体を介して抗パーキンソン病効果を惹起するものと考えられる。従って、タンドスピロンは従来の抗パーキンソン病薬とは作用機序の異なる薬剤として、パーキンソン病に有効であるものと思われる。今後は、この5HT1A受容体作動薬の抗パーキンソン病効果の作用機序を神経化学的に明らかにしていく予定である。
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