5-HT1A受容体作動薬は、うつ病において抗不安効果を有する。しかし、5-HT1A受容体作動薬性のタンドスピロンは、6-OH-dopamineによる黒質-線条体破壊の片側パーキンソン病モデルラットにおいて行動薬理学的に検討したところパーキンソン病治療薬の可能性を示唆した。そこで、その神経化学的機序をブレインマイクロダイアリシス法を用いて行った。 [方法]5週齢のWistarラットに6-OH-dopamineによる処置を行い、片側パーキンソン病モデルを作成した。1ヶ月以上経過してから、ドパミンD2受容体作動薬であるアポモルヒネによって40分間に150回以上破壊反対側に回転するラットを用いた。淡蒼球内節にマイクロダイアシスプローブを挿入し、20分毎の潅流液中のグルタミン酸をHPLCにて測定した。 [結果・考察]6-OH-dopamineによる黒質-線条体破壊側の淡蒼球内節細胞外液のグルタミン酸濃度は、シャムコントロールおよび反対側に比べ有意に増加していた。従って、黒質-線条体破壊によって、錐体外路系の神経伝達に異常が生じ、結果として視床下核から淡蒼球内節に投射するグルタミン酸神経が異常興奮を起こすことが裏付けられた。タンドスピロン投与によって、グルタミン酸濃度は用量依存的に低下した。5-HT1A受容体は縫線核以外に、視床下核のグルタミン酸神経に多く存在することが知られている。5-HT1A受容体刺激は抑制系に働くので、タンドスピロンはこの受容体に働き、異常興奮したグルタミン酸神経を抑制し錐体外路系の神経回路を正常化させるものと考えられた。 以上より、タンドスピロンのような5-HT1A受容体作動薬は従来の抗パーキンソン病薬とは作用機序の異なる薬剤として、パーキンソン病に有効であるものと考えられる。
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