研究課題
基盤研究(C)
標準的なパーキンソン病治療は、ドパミン受容体刺激薬あるいはドパミン前駆体であるL-DOPAの投薬である。特に、L-DOPAは極めて優れた抗パーキンソン効果を示すが、長期間の使用によって効果が減弱する上に、様々な副作用を引き起こす。そのため、L-DOPAによる長期治療のために、幾つかの薬剤が開発されているが、全てL-DOPAの効果を持続させドパミン神経を興奮させるものである。従って、非ドパミン系神経に作用する従来とは全く作用機序の異なる抗パーキンソン病薬の開発が望まれる。パーキンソン病における運動機能の異常は、いわゆる大脳基底核を介した「直接路」あるいは「間接路」の神経伝達経路の不均衡として発現する。直接路は入力部である線条体と出力部である淡蒼球内節や黒質網様部の間を直接つなぎ、抑制性アミノ酸作動性の神経である。一方、間接路は介在部である淡蒼球外節と視床下核を経由して両者を間接的につなぎ、抑制性アミノ酸作動性と興奮性アミノ酸作動性神経が組み合わされている。従って、これらの経路の非ドパミン神経の不均衡を改善すれば、パーキンソン病治療の有効な補助薬となると考えられる。セロトニン1A(5-HT1A)受容体は、抗うつ薬や抗不安薬が作用する重要な部位であると考えられている。5-HT作動性神経は、縫線核を起始部として基底核にも投射している。また、5-HT1A受容体は、縫線核および海馬と同様に皮質、視床下核および淡蒼球内節に高密度に発現している。本研究は、5-HT1A受容体刺激薬の抗パーキンソン病効果を行動薬理学的に評価し、その効果が基底核における運動神経回路の不均衡改善であることを神経化学的に証明した。これらの5-HT1A受容体が発現している基底核は、興奮性アミノ酸作動神経であり、5-HT1A受容体の刺激はこれら神経を抑制することが知られている。従って、パーキンソン病では興奮状態であるこれら基底核の5-HT1A受容体を刺激することによって、運動能の改善に寄与するものと考えられた。この知見は、新たな作用機序を有する抗パーキンソン病治療薬の開発に有用であると考えられる。
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