CYP2B9は、マウス肝臓で常在的にメス特異的に発現しているP450である。オスでは脳下垂体摘出により、CYP2B9発現はメスレベルまで亢進した。しかし、メスマウスの脳下垂体摘出術後では、それ以上の発現亢進はなかった。成長ホルモンの分泌プロファイルは、雌雄で異なる。オス型の分泌プロファィルに似せて朝夕2回投与すると、オスの脳下垂体摘出マウスのCYP2B9発現亢進を抑えた。また、脳下垂体非摘出メスに成長ホルモンをオス型で投与すると、完全に発現を抑えた。合成副腎皮質ホルモンであるデキサメタゾンは、脳下垂体非摘出メスのCYP2B9発現を完全に抑えたが、脳下垂体摘出メスマウスに対しては、抑制効果を示さなかった。従って、メスでの発現抑制には副腎皮質ホルモンと脳下垂体分泌因子の協調作用が必要であることが示唆された。肝細胞培養系では、デキサメタゾンや内在性のホルモンであるハイドロコルチゾン、またはコルチコステロンを添加すると、濃度依存的にCYP2B9mRNA発現を抑えた。またデキサメタゾンによる抑制効果は、強力な抗グルココルチコイドである、RU486存在下には減少した。これらの観察結果は、CYP2B9の性特異的な発現の原因には、オス型分泌プロファイルを示す成長ホルモンと副腎皮質ホルモンによる抑制効果が協調的に係わっていることが示唆された。さらに副腎皮質ホルモンによる抑制は、グルココルチコイド・レセプターを介して行われると考えられた。
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