研究概要 |
目的化合物を判別する解析法において,化合物特性空間という概念を導入した。さらに,その特性空間の中で目的化合物群がクラスターを形成していると考え、化合物全体の変動を最大にしつつ目的化合物の群内変動を最小にすることによって,識別に関する情報損失を最小に抑えながら低次元空間にマッピングできることを見出した。本方法を用いて,排出トランスポータであるP糖タンパク質(P-gp)の基質となる化合物の特徴解析を行った。その結果,化合物の2次元構造式から容易に計算することができるトポロジカル構造記述子を使って,P-gp基質を判別することができることを明らかにするとともに,生理活性をもつ8,000弱の化合物を全体空間の約1/60にしか分布しないことを見出した。さらに,この方法を経口医薬品のマッピング解析に応用したところ,Available Chemical Directoryに収載される一般有機化合物130,000種の特性空間の約1/12に分布することを見出した。従来行われていた主成分分析法を用いて同じデータを解析したところ,ほとんど識別能力がなく,本方法の有用性が示された。以上のように,本方法の開発によって,目的化合物の構造的特徴について視覚的にその共通性を捉えることが可能となり,コンピュータによって生成される仮想化合物の有効性を判別することも可能となった。この方法は,創薬初期の探索研究を合理的に推進する上で非常に有効なアプローチとなり得るものと期待される。
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