研究概要 |
三次元培養ヒト皮膚モデル(LSE-high)を用いた皮膚刺激性評価の指標であるin vitro細胞毒性試験について速度論的および薬力学的に解析し,そのin vitro試験結果と動物を用いたin vivo試験結果を比較した. LSE-highとヘアレスマウスの両者において,陽イオン性界面活性剤である塩化セチルピリジニウム(CPC)適用後の皮膚におけるviability(%)の時間推移は,intact (fun-thickness) skinと角層を除去したstripped skinとでは明らかに異なる挙動が観察された.intact skinでは,変曲点を伴う二相性が観察され,2つの一次速度定数(k_1およびk_2)で表すことができた.一方,stripped skinではCPCの適用初期より速やかにviabilityは減少し,一相性のプロファイルを示し,1つの一次速度定数(k_<ss>)で表すことができた.また,皮膚中CPC濃度は,intact LSE-highにおけるviabilityの変曲点付近である4時間以降ほぼ一定となった.一方,ヘアレスマウスにおける皮膚中CPC濃度は,定常状態となる傾向は示したもののその時間はLSE-highに比べて遅く,皮膚のviabilityの挙動と比べて遅れが観察された.しかしながら,ヘアレスマウス皮膚においてもviabilityの減少は1次速度定数で表すことができたことから,皮膚中濃度があるレベル以上のときviabilityの減少速度が一定になると考えられた. これらのLSE-highとヘアレスマウスの類似した皮膚刺激挙動は,培養皮膚を用いた皮膚刺激性評価法の有用性を示唆している.また,本研究から刺激発現部位での薬物濃度と刺激性の関係および皮膚刺激反応の速度論的解析の有用性が明らかとなり,皮膚刺激の評価ツールとしての培養皮膚の有用性を示すことができた.
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