研究課題/領域番号 |
15590138
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森田 邦彦 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (80327717)
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研究分担者 |
浅野 浩一郎 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60192944)
山口 佳寿博 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (30129712)
谷川原 祐介 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (30179832)
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キーワード | シスタチンC / 血清クレアチニン / 血清尿素窒素 / クレアチニンクリアランス / 腎機能 / 薬物血中濃度モニタリング / バンコマイシン / テイコプラニン |
研究概要 |
CockcroftとGaultの式などから算出されるクレアチニンクリアランス(予測Ccr)値は腎排泄型薬物の投与設計に汎用されているが、血清クレアチニン(Scr)値自体が筋肉量や腎前性の影響を受けるため、その信憑性が問題となる場合が少なくない。近年、このScr値の欠点を克服できる新しい腎機能マーカーとして血清シスタチンC(Cys C)濃度が注目されているが、腎排泄型薬物の投与設計に応用する動きは未だ見られていない。本年度は、薬物血中濃度モニタリング(TDM)用検体のうち、Scr値およびBUN値も併せて得られた162検体を対象とし、腎排泄型薬物の代表例としてグリコペプチド系抗生物質である塩酸バンコマイシン(VCM)やテイコプラニン(TEIC)に焦点をあて、これらが点滴静注された後の血中濃度推移と血清Cys C濃度との関係をretrospectiveに解析した。 対象検体の血清Cys C濃度は0.5-5.4mg/Lに、Scr値は0.1-6.5mg/dLに、血清尿素窒素(BUN)の値は2.0-40.4mg/dLにそれぞれ分散していた。血清Cys C濃度とScr、BUNあるいは予測Ccrとの間には有意な相関性が認められ、同様の傾向はVCMやTEICのトラフ濃度/用量比(L/D比)との間にも見出された。一方、予測Ccr値が150ml/min以上の異常高値を呈する症例では、回帰直線から大きく逸脱する例が少なくないことが判明した。Cys Cは、細胞内外の環境変化には影響されず常に一定の割合で産生され、糸球体濾過されるという特色をもつ。今回の結果は、血清Cys C濃度が単なる腎機能マーカーとしてのみならず腎排泄型薬物の投与設計に活用でき得ること、特に従来より信憑性が問題とされてきた異常に高い予測Ccr値を呈する症例への投与設計にも、血清Cys C濃度は有用であることが示唆された。
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