研究課題
基盤研究(C)
1.胎盤由来細胞株に対するファイバー改変型Adベクターによる遺伝子導入効率の検討ヒト由来胎盤細胞株であるJAR、JEG-3、BeWo細胞は未分化なサイトトロホブラスト細胞株として考えらている。これらの細胞において、Ad-L2においても遺伝子導入が可能であり、CARの発現が確認された。妊娠初期に単離されたヒトの初代培養胎盤細胞においても多量に存在するサイトトロホブラストではCARを発現しており従来型のAdベクターにおいても遺伝子導入可能である。また、ラット由来胎盤細胞株であるRcho-1、TR-TBT18d-1、TR-TBT18-2細胞もトロホブラスト細胞として知られており、これらラットトロホブラスト細胞においてもAd-L2での遺伝子導入が可能であり、CARのmRNAの発現が確認された。ヒトおよびラット由来胎盤細胞株を用いた遺伝子導入実験の結果、Ad-RGD(HI)-L2はすべての細胞においてAd-L2以上の遺伝子導入活性を示し、最大で76倍の遺伝子導入効率の改善が認められた。この結果は、用いた胎盤由来細胞にはインテグリンが高発現していたことに起因すると推察される。しかし、インテグリンとヘパラン硫酸の両方を認識するAd-RGD(HI)K7(C)-L2ではAd-RGD(HI)-L2程の高い遺伝子発現は見られなかった。これは、本検討で用いたAd-RGD(HI)K7(C)-L2はRGD配列とポリリジン配列の2つの外来ペプチドをファイバーに発現していることからファイバーの立体構造が不安定になり、生物学的濃度が低くなったのではないかと考えられる。2.胎盤由来細胞株に対するファイバー置換型Adベクターによる遺伝子導入効率の検討ヒト由来胎盤細胞株を用いた遺伝子導入実験の結果、CD46を受容体とするAd-F35-L2はいずれの細胞においてもAd-L2以上の遺伝子導入効率を示し、最大で6倍の遺伝子導入効率の改善が認められた。よって、Ad-F35-L2は胎盤細胞への遺伝子導入においてAd-L2以上の有用性の高いベクターであると考えられる。35型のファイバーを持ったAdベクターはヒト造血幹細胞などの未分化な細胞に対し従来型Adベクターよりも高い遺伝子導入を示すことが知られており、ヒト由来胎盤細胞株においても高い遺伝子発現を示した。
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