研究概要 |
(1)^<13>C標識合成 ^<13>C安定同位体標識アミノ酸は病態診断や天然物の生合成やたんぱく質化学研究に欠かせない基質である。光学活性グリシンの化学的等価体を立体選択的にアルキル化することにより、^<13>C標識光学活性アミノ酸合成できると考え、Dellaria's oxazinoneを鍵中間体として効率よくL-[3-^<13>C]phenylalanine, L-[3-^<13>C]tyrosine標識合成した。 また、CYP450群の内、既にCYP1A2で代謝される薬物として^<13>C標識フェナセチンを当教室は合成しており、またCYP2C9で代謝される薬物として^<13>C標識フェニトインも当教室で合成している。CYP2D6の代表的薬物で抗うつ薬であるイミプラミン、CYP3Aの薬物の代表としてよく知られているカルシウム拮抗薬ニフェジピンさらには14員環マクロライド抗生物質で広く臨床応用されているエリスロマイシンおよびクラリスロマイシンを選択し、糖鎖部分のN-メチル基に^<13>C-ホルムアルデヒドから位置選択的に^<13>C標識合成することを計画した。カルシウム拮抗薬ニフェジピンは比較的安価な^<13>Cメタノール等からアセト酢酸メチルエステルへ誘導し、Hantzsch合成法で効率よく合成した。 Clarithromycinは脱メチルclarithromycin体を合成し、位置選択的に[^<13>C]ホルムアルデヒドからイミン体へ誘導し、接触還元反応を行って標識目的薬物[N-^<13>CH_3]clarithromycin位置選択的に合成した。 標識目的薬物[N-^<13>CH_3]エリスロマイシンも同様の合成手法にて効率よく、合成に成功した。 [N-^<13>CH_3]エリスロマイシン合成と応用については、特許申請を急ぐ予定でいる。 (2)^<13>C-Phenylalanineおよび^<13>C-Tyrosine呼気試験 呼気試験は飲酒運転のアルコール検査と同様に呼気中の揮発成分から血中濃度を測定する手法である。被験者は無侵襲に肝臓での薬物代謝に深く関与するCYP450の酸化能力から肝機能を評価するものである。 先に合成したアミノ酸から芳香環を有するL-[1-^<13>C]phenylalanine, L-[1-^<13>C]tyrosineを活用すると呼気中の^<13>CO_2/^<12>CO_2比は投与前の呼気を基準にすると15分で極大値を示し、健常人群と肝硬変患者群とでは、呼気中の^<13>CO_2/^<12>CO_2比は明白な差があり、臨床応用が可能となった。[N-^<13>CH_3]Clarithromycinについても臨床応用に向かって、経口投与量、投与時間、食事の影響などの基礎的実験が重要な課題である。
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