研究概要 |
Gabapentin (GBP)は欧米でNeurontin^<【○!R】>として臨床使用されている抗てんかん薬で、神経痛をはじめとする種々の疼痛に対する鎮痛作用も期待されているが、その詳細な作用機序は十分に解明されているとはいえない。GBPの作用機序として電位依存性Ca^<2+> channel (VGCC)のaccessory unitであるα_2δ subunitへの結合を介したVGCC活性の阻害効果が報告された。現在臨床使用されているCa^<2+> channel blockerの標的分子はL-type α_1 subunitであるのに対し、GBPはα_2δ subunitを標的としており、GBPのVGCCに対する作用機序の検討はGBPの臨床適用の拡大を図る上でも興味深い。一方、GBPはNa^+非依存性中性アミノ酸輸送系system Lを介して輸送されることが報告されている。VGCC活性化に対するGBPのIC_<50>値(10-100μM)がK_d値(〜100nM)と大きく乖離しているのに対して、GBP輸送におけるK_t値(〜100μM)とほぼ一致することから、GBPの薬理作用発現にVGCCと細胞内輸送が関連している可能性が考えられる。そこで、本検討ではヒトアストロサイトおよびマウス大脳皮質初代培養神経細胞を用いて、GBPの輸送特性とVGCC阻害作用を検討するとともに、GBPのVGCC阻害とsystem Lを介した細胞内輸送との関連についても検討を加えた。 ヒトアストロサイト、マウス大脳皮質初代培養神経細胞へのGBPの輸送はNa^+非依存的かつpH依存的であり、その輸送は中性アミノ酸輸送系system Lの基質となる化合物で有意に阻害されたが、GABAでは阻害されなかった。また、あらかじめ細胞内に負荷した[^3H]GBPの細胞外へのeffluxに対する中性アミノ酸によるtrans-stimulation効果が確認できたこと、RT-PCR、Western blot、蛍光免疫染色によりsystem Lの構成subunitの発現も確認できたことから、GBPが中性アミノ酸輸送系system Lを介して輸送されることを実証できた。一方、両細胞において、KCl脱分極刺激により増大する[cGMP]_iをGBPが濃度依存的に阻害し、さらに他の[Ca^<2+>]_i評価系でも同様の結果が得られた(IC_<50>=22-111μM)。しかし、得られたIC_<50>値とGBPのbinding assayから得られるK_d値(135nM)とは約1000倍の乖離が認められた。GBPのVGCC活性抑制作用は中性アミノ酸輸送系system Lの基質により濃度依存的に回復したが、他のアミノ酸輸送系の基質となる化合物では回復効果が認められなかったことから、GBPのVGCCを介した細胞内へのCa^<2+>流入と中性アミノ酸輸送系system Lを介したGBPの細胞内取り込みの関連性が示唆された。また、ヒトアストロサイトではL-type VGCCが優先的に発現、機能していることが示されたが、マウス大脳皮質初代培養神経細胞ではL-,N-,P/Q-typeのVGCCを発現していることが示唆され、[cGMP]_iによる評価系を用いた結果と考えあわせると、GBPは非選択的にVGCCを阻害していることが明らかとなった。
|