研究課題
ウイルスベクターの製造過程で混入する可能性のある増殖性ウイルスの検出は、遺伝子治療用ウイルスベクターの品質、安全性確保上重要な課題である。本研究ではウイルスベクターに混入する増殖性アデノウイルス(RCA)及び増殖性レトロウイルス(RCR)を、ウイルスの指向性細胞への感染性とリアルタイム定量PCRの迅速性、高感度性、定量性を組み合わせた感染性(RT-)PCR法により検出する方法を開発した。RCAは、HeLa細胞に感染させ、一定期間増幅後、細胞中のRCAのゲノムDNAをガラスビーズ法により簡便で効率よく抽出し、リアルタイム定量PCRで測定した(感染性PCR法)。その結果、10^9 particlesのアデノウイルスベクターにスパイクした1pfuのRCAを感染3日目で検出可能であり、従来法である細胞変性効果(9日目で10,000pfuを検出)による検出と比較して、より短時間の培養で10,000倍も高感度にRCAを検出可能であることを明らかにした。RCRは、M.dunni細胞に感染させ、一定期間増幅後、上清中のRCRをポリエチレンイミン(PEI)結合磁気ビーズで濃縮し、ビーズ画分からRCRのゲノムRNAを抽出してリアルタイム定量RT-PCRで測定した(感染性RT-PCR法)。RCRの場合も従来のRCR検出法のフォーカスアッセイと比較して、より短時間の培養で10倍以上高感度にRCRを検出可能であった。また、上清中のRCRではなく、細胞内に増幅したウイルスRNAをガラスビーズ法で抽出後に測定すると、さらに短時間の培養でウイルス検出が可能であった。また、RCRをPEI磁気ビーズと混合後に磁場の上で強制感染させることによる短時間で高効率なウイルス感染系を確立した。この感染系を利用して感染性RT-PCRを行うことにより、さらに10倍以上高感度にRCRを検出できることを明らかにした。
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