哺乳動物の下垂体前葉の性腺刺激ホルモン産生細胞は、黄体化ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)という2種類の性腺刺激ホルモンを血中に分泌するが、これら2種類の性腺刺激ホルモンを機能状態に応じて適正に分泌しわける分子機構に関しては、いまだに解明されていない。本研究では2種類の性腺刺激ホルモンの分泌を精妙に制御する分子機構の詳細を明らかにする目的で、性腺機能に関わる様々な液性調節因子の血中濃度を人為的に変化させたラットを作成し、その下垂体前葉における遺伝子発現プロファイルの変化をDNAマイクロアレイを用いて包括的に解析している。 平成15年度には、8群に分けた雌雄のラット(各群30匹、計240匹)に去勢手術と雌雄の性ステロイド持続投与を組み合わせた処置を施し、さらに2週間飼育したのち下垂体組織を採取した。現在、これらの下垂体組織から、順次、mRNAを抽出・単離し、DNAマイクロアレイを用いて各機能状態における遺伝子発現プロファイルを解析しているところである。 来年度以降は、この解析結果を踏まえて、ある機能状態で特異的な変動を示す遺伝子を絞り込み、その遺伝子産物の下垂体における局在や機能解析を、in situ hybridization法、免疫組織化学法、遺伝子発現実験などを用いて検討していく予定である。
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