研究概要 |
本研究では2種類の性腺刺激ホルモン(黄体化ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH))の分泌制御機構を明らかにすることを目標に、性腺機能に関わる様々な液性調節因子の血中濃度を人為的に変化させたラットを作成し、その下垂体前葉における遺伝子発現の変化をDNAマイクロアレイを用いて包括的に解析している。平成15年度には、去勢手術と雌雄の性ステロイド持続投与を組み合わせた処置を施したラット(8実験群各群30匹、計240匹)から、解析材料となる下垂体組織を採取した。 平成16年度には,これらの下垂体組織から同一の手順でmRNAを抽出・単離し、約12000遺伝子の断片がスポットされているDNAマイクロアレイを用いて各機能状態における遺伝子発現を比較した。現在までに,この膨大な遺伝子発現プロファイルデータから,まず下垂体で有意に強く発現している約500個の遺伝子(whole bodyからの抽出mRNAを基準として下垂体での発現量が2倍以上高い遺伝子)を同定し,さらに(1)雌雄間で有意な差が認められる遺伝子群,(2)テストステロン投与で有意に発現が増加する遺伝子群,(3)エストラジオール投与で有意に発現が増加する遺伝子群,(4)去勢手術で発現が増加する遺伝子群の各群に整理して,これらの実験処置と遺伝子発現の変化の関連性をノザンブロット法で検証しているところである。 来年度以降は、この中で特に興味深い発現変化を呈するいくつかの遺伝子に焦点を絞り,その遺伝子産物の下垂体における局在や機能解析を、in situ hybridization法、免疫組織化学法、遺伝子発現実験などを用いて検討していく予定である。
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